同窓会で10年前の自分から手紙を受け取った。
そんなものを書かされた記憶すら皆無だったが、筆跡とインクの色から、どのペンで書いたかは思い出せた。
「今の仲のいい人達とまだ付き合いがあればいいな」とか「太るな、整形しすぎるな、年老いても美意識の高いブスであれ」みたいな、程々に当たり障りない事が書かれていて
当時の字の汚さに辟易したが、それについても予期していたようで「本当はもっと綺麗な字が書けるので大目に見てくれ」などと未来の自分へ弁明がなされていた。
概ね想定内。
そして締め括りもいつも通り。
"大人になるにつれて色々なものが変わってしまうのだろうけれど、どれだけ月日を重ねても、私はいつまでも私らしく唯一無二の私でありたいと、そう願うのです。"
思えばそれは小学生の時から言い続けてきた言葉で
つまり幼い頃から私はただ不変を望む、今も大して変わっていない、ということ。
自分の未来や行く末に思いを馳せる時そこに理想は何もなかった。
ただ今日を生き抜くことを繰り返すだけの人生を送っていて
改善を望むだけの気力もなかったし、これ以上悪い方向へ落ちていくことに耐えるだけの余力もなかった。
だからただ変わりたくなかった。
私が私であることしか望んでこなかった。
というか、本来なら生き延びただけで及第点だし。
きっとお世辞にも幸せな学生時代だったとは言えないし、ごく数年僅かであったけれど永遠に感じるほどの、四肢を端から静かに焦がし続けるような陰険な地獄だった。
けど、私が私であるための最低条件は守り抜いたし、そんなに何もかも楽しくなかったわけじゃないよ。
今が幸福かと問われれば、幸福の条件はなんぞやなと思うけれど
きっと渦中にあったあの時よりは穏やかな日々を送っているし
あの時を「そんな日もあったな」と懐かしく思い返せるくらいにはなったのだ。
もはや選択する余地がないから不変を望む訳ではなく、ただ今の此処に在る穏やかさが続いて欲しいと不変を望むということは、ある種の幸せなのかもしれないよ。
大人になるにつれて、色んなものが変わってしまったけれど、どれだけ月日を重ねても、私はいつまでも私らしく唯一無二の私でいるよと、
あの苦しさの中で息を詰まらせている、あの時の私に、そう伝えたいのです。