コトダマリ

抜け殻の感性。

À la recherche du temps perdu

いつだって、失う覚悟を持っているべきだと思う。

花は枯れ、色は褪せ、温度は奪われ、心は移ろふ。

どうも変化に心が着いていけない。
ただ穏やかに過ごしたいだけなのに、季節が巡る、命が潰える、人の感情が記憶が混濁したものが流れていく。
そういうことに、すごく疲れてしまう。
気圧とか気温差とか目に見える数値の変化で測っているけれど、根幹はそこにあると思う。

私は不変で在りたいといつも思っているけれど、そういう理に反した願いを敢行することは法や人としての道徳に抵触することになる、とよく知っていて。
だから、私に出来ることは、ただ失うことを恐れないことだけ。

いつだって失う覚悟を、そして、いつだって失われる覚悟を持っているべきだと思う。

目が覚めて、昨日までの現実が全て夢であれば良かったと思う。
目が覚めて、今ここに在るものが夢でなくて良かったと思う。
そのどちらも、本心。

同じように
私を知って隣で生きていてくれる人が居て良かったと思うし
私を知って隣で生きる人など居なければ今日まで生きずに済んだとも思う。
そのどちらも、本心。

喪失することで湧く感情が一番狂熱的であるから、失うことでしが感じられない愛だってあるのだろうし。
失った先でやっと遂行出来る約束もあるのだろう。

そう思わないと、失う覚悟なんて持てやしない。

紅茶とマドレーヌの香りで遡るように
散った花弁を握りしめて夜を超える。

またあの冬が来るまで。