コトダマリ

抜け殻の感性。

全方位厄

乾いた糸を弾くような合成音に支配されている。
緑色の悪魔に取り憑かれ、青い鳥に見透かされている。
手のひらサイズの薄っぺらい知能。
そういう世界で生きている。

この星を支配している種の大半は、高等な文明を手に入れただけの猿だから
善と悪のどちらかに丸をつけて生きていくのだって
そんなに簡単じゃないし。
感情の制御だって理性だってアテになりゃしない。

目を閉じたら夜は明けるけど、ここは繰り返し終わらない大殺界で
みんな現実と向き合うだけで精一杯なのに、これ以上何を望むというの。

教育ってやつは、怒り方も、許し方も、助けの求め方も、大切なことはなにひとつ、教えてくれなかったくせに。

もうこれ以上何かを喪って、自分の立っているところも分からなくなって
それでも輝く未来のためになんて夢見がちな目標をかかげて、自分のために努力を重ねて生きていくなんて
絶ッッッッッ対に御免だ。

私はもっとぬるい火の中で燻って居たい。

混ざりこんだ黒い血が、もう分けられないように
棲みついている。巣食っている。一部となった。
それは絆だとか、信頼だとか、愛だとか
そんな綺麗でくすぐったいものじゃなくて
もっと利己的な、もっと狡猾な
私からの呪いなのだ。

これは優しさだとか、情けだとか、愛だとか、
そんな温かく甘ったるいものじゃなくて
もっと悪辣な、もっと陰湿な
私からの呪いなのだ。

何にも手に入れない代わりに、何にも失いたくないだけなのに
どうしてこんなに、悲しくならなくちゃいけないんだ。