私の唯一の家族の祖母が 居なくなってしまった。
(正確には同居している血縁はまだあと3人いるのだけれど、私が家族だと思っているのはもうずっと祖母だけだった)
火葬とはあまりにも残酷な文化だなと思う。
ほんの1時間前までそこに寝ていたのに、他人の手によって無機質な扉の奥に押し込まれて、呆気なく終わらせられてしまう。
残ったのは、浜辺に打ち上げられた珊瑚みたいな それ だけ。
まるで最初から誰もそこに居なかったみたいに。
毎日何千人という人が死んで
それは大して珍しいことでもなくて
きっとただ順番が巡ってきただけで
ついこの間まで知らない他所の話だったことが、突然目の前にやってきて全てを変えていってしまった。
何も変わらないことを望めば望んだだけ、そうではいさせてくれない。
そういうふうに出来ているらしい。
そんなに何もかも変わってしまうなら
いっそ私のことも珊瑚にしてくれたら、こんなに悲しくなったりはしなかったのに。
そんな気持ちを閉じ込めるために、左耳に針を刺した。