昨日の分のとてつもない悲しさがやって来て、シャワーの音に紛れて泣いた。
その感情は私のものでありながら、知らない誰かの日記を覗き見ているような感覚で
涙の成分は肌に悪いから洗い流されて丁度良い などと頭の中は冷静さを保っているのに、涙腺が感情を持ったみたいに決壊していて、どうして今更泣いているのかと、当の私は首を傾げていた。
乾いた空気と脈の重さのコントラストで自分の輪郭がぼやけて、自分の形だって分からなくなってしまうような苦しさ。
排水溝に流れていくパステルカラーの泡を踏み潰した。
あの日から全部意味が無い。
この手が冷たいその表面をなぞる時、幾度となく謝罪を繰り返した。
この指先が凹凸を這う時、忘れないようにその名前を唱えた。
こちらから見えない何かに一方的に見守られているなんて、あまりにも生者に都合の良い解釈で
差し出した手が鏡の向こう側と触れ合うことのないように、こちらとあちらの視線が交わることもなくて
私が探している二度と見つけられないその人は、同じように二度と私を見つけることは出来ないのだ。
それでも探している。それ以外にそこには何も無いから。
届かないことを知っていながら向こう側へ祈るなんてこんな不毛なこともう辞めて
最初から居なかったことに出来たら
そうしたらこんな悲しみも、こんな悲しみを感じている私自身も、存在しなかったのに。
そこが描かれた天国だとしても、意思もない虚空だとしても。
そのどちらも。