コトダマリ

抜け殻の感性。

2020-01-01から1年間の記事一覧

背ける

悲しさが一定を超えると、呼吸の仕方がわからなくなる 気道が酸素を拒む 生きることを本能が恐れる スピーカーから流れる英語のフレーズは「お願いだから振り返らないで」と、そう聞こえる気がした 花束を2月に置き去りに、3月へ来てしまったこと 二度と花の…

呪いをかけた

消しゴムのスリーブの内側にすきなひとの名前を彫って 郵便局の真っ赤な車を見かけたらお願いごとをして なんでもない ただ気のせい カラフルな糸を足首に巻き付けて 雑誌の端っこの占いをチェックして そんなことで明日がハッピーになるわけはなくて あんな…

左耳に3つ目のピアスを開けた

私の唯一の家族の祖母が 居なくなってしまった。 (正確には同居している血縁はまだあと3人いるのだけれど、私が家族だと思っているのはもうずっと祖母だけだった) 火葬とはあまりにも残酷な文化だなと思う。 ほんの1時間前までそこに寝ていたのに、他人の…

夢と現実の区別がつかない

暗闇で目を瞑ると 瞼の裏に無数の色の粒が蠢くノイズが見える 色の怪物に囲まれて それは今にも世界を飲み込もうとしている よく知った部屋のはずなのに すぐそこに私の痕跡があるはずなのに ここは何者かに支配されている カーテンが涙を流して、空調が唸っ…

bouquet

鉢植えより切り花が好きだ 摘まれた花は孤独を感じている 根から、葉から、隣の茎から切り離されて 寂しさと悲しさと迫り来る死への恐怖に打ち震えている 生花の死にゆく呼吸に耳を傾けていると 自分の消えたい気持ちが昇華されていく 刻一刻と色を失ってい…

矛盾している

「あなたは自分で思っているより価値のある人間だよ」なんて言われても 目で見えない、数値で計れないものへの実感はゼロで、証明できないものは無いことと等しいのだ。 そう思っていながら、裏側では目に見えない信頼関係なんてものに縋っている 信頼関係を…

文字を吸って言葉を吐く

私にとって言葉を紡ぐことは 水面から顔を出して息をすること 生きているだけで色んなものを感じている 空から差し込む光、それを反射して煌めく鱗、シンと冷たさを増す水圧、何かの骨が軋み砕ける音、刺さる血の匂い、遠ざかっていく砂埃 そういう五感で捉…

毒餌を撒く

まともじゃない感性を生み出した 毒を与えられたから開花した プラスもマイナスも光も闇もひっくるめた 私がここに今生きているので 絶望的な毎日の繰り返しもそんなに悪いものじゃなかったよって きっといつかそうやって こんなチラ裏のラクガキも笑い飛ば…

クソがつくほど

誰かを救いたいヒーローは劣等感の塊だった 誰かの劣等感を拾うことで自分の方がずっとマシなんだと心の中でマウントを取って 誰かを救うふりをして自分の価値を確かめた 他人に手を差し伸べる余裕のあるフリをして 既にいっぱいいっぱいの器を隠しながら 辛…