人間は死んで肉体を失った後も誰かの記憶の中で生き続けるのだけれど
私は誰の記憶にも残りたくなどないのよ。
写りの良くない写真を遺影に使われたり
私の人生を知りもしない人に私の人間性を語られたり
私の肉体や心を蝕んでいた人に軽率に哀れみ悲しまれたり
私の感情の外側にいた人に私の心を知ったように扱われるのは
我慢がならないことなので。
それに何より、私が遺していった誰かが私の死を哀しむようなことがあってほしくはないので。
誰の記憶にも残らず、私の生きていた痕跡を全部綺麗にゼロにして、まるで最初から誰も居なかったみたいに消えてしまいたいと思う。
誰にも気付かれないところで灰になってどこか遠くに飛んでいきたい。
だからそれが出来ないうちは、自ら死を選んだりはしないよ、きっと大丈夫。